大都会には魔物が棲んでる・その1
ちょっとタイトルが厨二っぽいですけど、ヤマト→ハラダ→リョウタとの後にいよいよ家裁からの呼び出し状が届き父と一緒に家裁に行って反省してます的な事を言った後に地元を出て行きました。
地元から離れた1番の繁華街に何のアテもツテもなく飛び出して行った私は心底から腐っただめんずに引っかかります。
信じられないことにそのだめんずは私とタメで、16歳にしてあのだめんずっぷりはかなり見上げたもんでした。
もしこの世にだめんず王国があるとしたら、結構な地位を築いてるんじゃないかなぁと思いますが国王にはなれませんね。
国王様はこのもっともっと先にラスボス級のが出てきますんでね。
男の名前はジュンイチ、私と同い年の家はあるけど家庭が複雑だから帰りたくない系の男だった。
この頃の私の収入は援交のみで、とんかつ屋のバイトも辞めて何もかも捨ててこの地にやって来ていた。
ジュンイチとはふらついていた夜の繁華街で知り合った。
家出?と言われて手短に、そうとだけ答えたのを覚えている。
するとジュンイチは近くの廃ビルに雨風凌げて温かいし、他の家出仲間も寝泊まりしてる所があるから良かったら来る?と言ってきた。
私は援交で稼いだあとそのまま先に客が帰ってそのままホテルに泊まるか、客と朝までホテルで過ごす事が多かった。
家出仲間なんて求めちゃいないし、またロクでもないのがいたら洒落にならないので断ってさっさとその場を後にした。
ジュンイチとの出会いはそんな感じだった。
援交するのに必要なのは公衆電話と界隈で1番男性客の多いテレクラの番号、そして横並びの公衆電話が並ぶところには大体こいつもテレクラで客を探してるなって言う女の子がいるもんだ。
そのうちそこでミナコとナオコと言う二人組と知り合って、ここに来たばかりの私にいいテレクラや気をつけた方がいい客の特徴とか、待ち合わせしやすい場所、ガードが甘いホテル(※どう着飾っても明らかにこっちは未成年なので)やフロントレスのホテルを教えてもらった。
そのうち3P希望の客がいた時に互いに呼びあったりするようになった、ミナコはまだ14歳でナオコは17歳。
いつも家に帰っている様子はないけど、どうしてるの?と聞かれて適当に過ごしてると答えたら家出仲間で使ってる廃ビルがあるからそこに来たい時においでよと言われて、ジュンイチが浮かんだ。
男しか居なかったら嫌だと警戒したけどミナコやナオコがいるなら行ってみようかと言う気になった。
その日お互いの売りが終わった後にベル番を渡すから連絡するよう言われた。
私はPHSだけど二人はポケベルなので私がメッセージを打って待ち合わせ、家出仲間達が集まる廃ビルに招待して貰った。
灯りはもちろんあまりないけど布団もあって一人でいるより賑やかで女の子も他にもいたしカップルもいた、何より本当に温かく貴重品以外の荷物をロッカーに預けて毎日出し入れするよりうんと安くあがる。
私はこの日から拠点をこの廃ビルに移した、トイレはまだ水が通っていて使えるし間近にはマックがあるので洗面やメイクにも不自由しない最高の立地だった。
するとジュンイチが廃ビルに帰ってきて、真っ先に声をかけてきた。
ジュンイチはパー券を捌いたりもっと別の物を捌いたりして暮らしている、あとは未成年だけどスロットかパチンコ。
本当に昔は今より全然ユルかった、私たちの歳でも多少大人びてるカッコさえしてれば普通に打てたし身分証の確認なんかされた事もなかった、居酒屋もそう。
私は特にタイプでもない背の低い金髪のジュンイチと一緒にいる時間が増えていった。
でもミナコもナオコもジュンイチが好きだと言っていたので、あくまでも自分は付かず離れずの微妙な距離を置いて親しくしていた。
そんな時、ミナコには同じ14歳の彼氏が突然出来て17歳のナオコはジュンイチに告白してフラれてしまった。
自分はジュンイチになんの感情もなかった、でも向こうは違ってきた。
ある日売りを終えて廃ビルに戻るとそこには私とすでに出来上がっているカップルだけ。
布団に入ってさっさと寝てしまおうと目を閉じた、でもすぐに誰かが布団に入ってきて身を起こす。
そこに居たのはジュンイチで、好きだと言って一方的に押し倒してきた。
私はどうしたもんかと思ったけど、援交するのに抵抗もなくなった自分にとっては客だろうが好きでもない男との行きずりのセックスだろうがどちらも大差はなかった。
まぁお金は当然稼げた方がいいけれど…でも同い年の男に抱かれるのって考えてみたら初めてだった。
客は言わずもがなおっさんばかり、ヤマトもハラダもリョウタも年上だった。
一生懸命になって抱こうとする同い年の男を可愛くさえ感じた、私はこの一晩だけの互いの寂しさを紛らわす行為を許してしまった。
だがリョウタには一晩だけなんてつもりはない、翌朝起きると皆の中で私は『リョウタの彼女』になっていた。
リョウタが皆にそう言って周り、私は違うと言う気さえなくしてなぁなぁにしてしまった。
ところがこの男、売りに行く時間以外に一緒に過ごしていた事がなかったので一緒に行動するようになるとヤバい感じだなとわかってきた。
組の事務所に出入りし、たまに黒塗りの車がきてジュンイチを呼びつけ何かを渡す。
繁華街で1番大きな公園は有名な売人たちのシノギスポットだった。
ジュンイチは私を連れてネタを捌いたり、組の人に挨拶させたりするようになった。
その中に1人、カシワバラと言うチンピラがいて会うといつもニヤニヤといやらしい笑みを浮かべて足から舐めるように見上げてきた。
組に出入りしてると言ってもカシワバラ程度の男はチンピラだろうとすぐにわかる。
初めて会った時、品定めするように下から上へと下品な視線を浴びた事を今でも思い出す。
魔物は間違いなく、ここにいるのだ。